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システム業界の偽装請負と準委任 - 法的にOKなこととNGなこと

投稿日:2019年3月7日 更新日:

システム業界の中でもSIと呼ばれる業界があります。SIはシステムインテグレーションの略になります。BtoBつまり企業向けにシステム関連のコンサルから開発・運用・保守までを請け負うシステム会社になります。SI事業を行なう会社をSIer(エスアイヤー)などと呼ぶこともあります。

さて、この業界は、以前から多重請負構造が問題になっていました。元請のSIerの社内に下請システム会社のエンジニアが常駐して作業するという形態が多く見られています。

このような開発を行なう場合の契約形態や問題点について考えてみました。労働局主催のセミナーで教えていただいたことをベースにこの記事を書いていますが、法律の専門家ではないことをご了承くださいませ。

 

 

元請SIer内で常駐して作業する場合の契約形態

幾つかの種類がありますが、おもに以下の3パターンに分類されます。

  • 派遣契約(労働者派遣法)
  • 請負契約(民法第632条)
  • 準委任契約(民法第656条)

 

 

派遣契約

法的に一番すっきりしているのは派遣契約です。エンジニアは派遣元の会社と雇用関係を結びますが、指揮命令は派遣先から受けるという形態です。

開発作業を行なう中で元請SIerから作業指示を受けたとしても問題にはなりません。

 

 

請負契約

下請けシステム会社は、開発の一部または全部を元請SIerから請け負い、その仕事を完成させます。一方、元請SIerはその仕事の結果に対する報酬を支払います。

派遣契約との違いは何でしょうか。エンジニアは、引き続き自分が所属する会社から指揮命令を受けることになります。元請SIerが直接下請けシステム会社のエンジニアに指示をするなら法令違反になります。作業現場の実態は労働者派遣であるにも関わらず、請負契約と偽っているわけです。いわゆる偽装請負と呼ばれるものです。

一方、元請SIerが下請けシステム会社のエンジニアに直接指示をしないような取り決めがきちんとなされているなら、元請SIerの社内で常駐作業することは問題ありません。

 

 

準委任契約

請負契約と同じくエンジニアは自分が所属する会社から指揮命令を受けることになります。請負契約との違いは、何でしょうか。

  • 請負契約
    仕事を完成させる必要があります。瑕疵担保責任があります。再委託を行なうこともしばしばあります。
  • 準委任契約
    仕事の完成を約するのではなく、元請SIerが依頼した作業を行なうという契約です。約束した時間だけ作業を手伝うというスタンスになります。瑕疵担保責任は負いません。基本的に再委託という考えはないので、再委託の場合は事前に契約書にその旨を明記します。システム業界では、SES契約(システム・エンジニアリング・サービスの略)と言われることがよくあります。

 

 

SI業界でしばしば見られる契約上の問題点

 

偽装請負

請負契約であるにも関わらず、元請SIerがエンジニアに直接指示をするという状況です。元請SIerの社内に常駐している場合、このような状況になってしまうことがあります。

最近では、元請SIerが下請システム会社のエンジニアに対して残業指示や休日出勤の指示などを直接することはかなり減っていると思いますが、以前はそのようなことが当たり前のようになされていました。

準委任契約の場合でも元請SIerから直接指揮命令を受けると法令違反になりますので、注意が必要です。

 

 

準委任契約における再委託問題

元請SIerに3次請けや4次請けのエンジニアが常駐することがあります。元請SIerと2次請けシステム会社のとの契約で再委託が許可されているでしょうか。もし、再委託禁止になっている場合、契約内容に違反することになります。3次請けや4次請けといったポジションでプロジェクトに参画する場合は、注意が必要です。

システム業界では、所属会社名を名乗ることができないエンジニアがたくさんいます。準委任契約であるにも関わらず、元請SIerにナイショで再委託しているので所属会社名を名乗ることができません。二次請けシステム会社の社員と偽ってプロジェクトに参画しているエンジニアたちがいます。

 

 

勤怠管理の問題

有給休暇の取得などの勤怠管理が、現場だけで行われて、エンジニアの所属会社では管理されていないという問題があります。

勤怠管理は所属会社が行う必要があります。この点もなかなか難しいところですね。

 

 

プロジェクト参画前の職務経歴書(スキルシート)の提出と面談

プロジェクト参画前に職務経歴書を送ったり、プロジェクトマネージャーとの面談が設定されることがしばしばあります。面談の結果として採用されたり、されなかったりするわけです。実は、この行為は違法になる場合があります。

請負契約にしても、準委任契約にしても、元請SIerは下請けシステム会社に対して何らかの作業を委託するのであって、どのエンジニアが作業するかまでを決める権限は本来持っていません。

この点は、常駐形態での開発を行っている現場では必ずといっていいほど起きている現実です。今後、この業界がこの問題にどのように向き合うのか、あるいは労働局がメスを入れるのか、気になる点です。

 

 

まとめ

法的に完全にクリアの状態で元請SIerに常駐するには、派遣契約が一番すっきりしていることが分かります。

一方で、多くの契約は請負や準委任という形態になっています。その場合、間違っても実態が派遣契約のようなことにならないよう十分注意する必要があります。

  • 指揮命令系統の問題
  • 勤怠管理の問題
  • エンジニアの職務経歴書の開示や面談の実施という問題

こういった問題を解消するためには、すべてのシステム会社が元請のポジションを目指すか、労働者派遣の許可を取って派遣会社になるかの二択しかないように思います。どちらを選ぶのか、なかなか難しい問題ですね。ちなみに、当社は元請のポジションを目指すべくこれからもがんばります。

では、今回はここまでです。

 

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8年間の客先常駐を経験後、いったんソフトウェア業界を離れ、事業承継のために再びこの業界に戻ってきた異色のエンジニア。ただ今、SEOやWebマーケティングに注力中。

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